短
歌（和歌）における枕詞って、ちょっと大層なフリをしているが、実はぜんぜんどうでもいいもので、本当にちゃんと素晴らしい三十一文字を作り上げようという志がある人間だったらそんなものはまず使わないはずで、この言葉に対してはこれ、というお決まりがあるあたり、「よっ、待ってました」的な、大衆演劇的な、本格的な芝居どうこうという論理じゃなく、ただ受け取る側の痛快さのみに寄与する、「機能性」を感じる。機能性なら機能性で別にいい。高級料理に対するファストフード、高級ブランドに対するファストファッション、それはそれでいいのである。
納得がいかない部分があるとすれば、それは冒頭でも触れたように、「大層なフリをしている」ところだ。学校で和歌について学んでいるとき、枕詞は短歌技法のひとつとして説明され、どの言葉にどの枕詞が用いられるか覚えるなんてことまでさせられた。あれが、いま思えば「なんでやねん」なのだ。なんで我々が、歌の情趣とかとは一切の関係もない、当時の人々の「よっ、待ってました」のお決まりを覚えなければならなかったのか。なぜそんなものが答えられなかったから減点されなければならなかったのか。そのなぜ、という問いに真正面から答えるとするなら、こういうことになると思う。
枕詞は、一問一答の試験問題にとてもしやすいから。
意味とか、情趣とかは、取り止めがなくて問題にしづらい。ともすれば研究者によって解釈の違いだって出てくる。それに対して、「あしひきの」→「山」、「たらちねの」→「母」は、国語においては本当に珍しく、確固たる正答がある。そのため試験という形式との親和性が高い。だから枕詞は、真に価値があり、権威があったから試験に採用されたのではない。逆だ。試験に採用するにあたり、枕詞には価値が必要になった。だから後付けで、技法だのなんだのといわれるようになったのだと思う。
冷静に考えたら、こんな音を調子よくするためだけのフレーズに、意味も価値もあるはずがない。こんなものはただの遊びに過ぎない。遊びに過ぎないのだから、誰に断るまでもなく、僕が新しいそれを考えても問題ないということになる。枕詞とは、それくらい権威もなにもない、どうでもいいものなのだ。
というわけで最近はTwitter短歌でもっぱら、「＃オリジナル枕詞」と付して、それを使用した短歌をアップしている。ここでは現時点までで、オリジナルの枕詞を使って詠んだ歌を紹介したい。
ここで断っておきたいのは、ここまでさんざん、枕詞の価値の低さについて唱えてきたが、それは既に定まった、誰が最初に言い出したかも知れない枕詞を、自分が詠む短歌に使うのは本当に志が低いことだ、という意味でいっているのであって、この僕の試みのように、枕詞そのものをオリジナルで発案する場合、これは新しい趣向として大いに価値がある。皮肉もきいているし、とても創造的だ。大いに褒められて然るべきだと思う。誰も褒めないので、とりあえず自分で褒める。枕詞と、それの掛かる言葉が、近すぎても、遠すぎてもいけないので、その距離感が難しい。センスが問われる。以下に挙げるものの中にはそれが失敗しているものもある。これは仕方ない。少々の失敗はしょうがない。でもとにかく試みとしてすばらしい。そう思う。
オリジナル枕詞
「乳重（ちちおも）の」→「梅雨」
例：乳重の梅雨まだ明けぬ海の日の潮の香りのする膝枕
「常濡れ（とこぬれ）の」→「放課後」
例：常濡れの放課後ならば金玉を少しは触ってやってもいいよ
「抜きすさぶ」→「ナイトプール」
例：抜きすさぶナイトプールは総量の６割近くがバルトリン液
「夢縫い（ゆめぬい）の」→「陰嚢」
例：夢縫いの陰嚢だけが高校にもう何年も留年している
「めめぬめる」→「女湯」
例：めめぬめる女湯だけど俺だけは使ってもいい そう聞いている
「双子獅子（ふたごじし）」→「金玉」
例：双子獅子金玉を食むＪＫの今夏限定グロスまばゆき
「ちんまんの」→「セックス」
例：ちんまんのセックスしたい梅雨明けの急な雷雨のような衝動
「花襞（はなひだ）の」→「プリーツスカート」
例：花襞のプリーツスカートひるがえしをとめが見せる大小陰唇
「爛転ぶ（らんまろぶ）」→「ビキニ」
例：爛転ぶビキニで海に現れし少女に奢るフランクフルト
「べろつばき」→「フェラチオ」
例：べろつばきフェラチオクラブを創設す野添がまさか処女だったとは
べろつばきフェラチオばかりして過ごす忘れらんない夏にしようよ
「天を突く」→「勃起」
例：天を突く勃起のなにが好きかって語り合ってるひとときが好き
「てるつよし」→「亀頭」
例：てるつよし亀頭あたかも真円の球であるかのようなつやめき
「ぱんもゆる」→「ポルチオ性感帯」
例：ぱんもゆるポルチオ性感帯だけが俺の孤独を癒してくれた
「海外の」→「ヌーディストビーチ」
例：海外のヌーディストビーチ行ったとて欲情しないしさせもしないし
「さざなむる」→「陰毛」
例：さざなむる陰毛しげりをとめごは恋に部活に充実の日々
「味しらべ」→「乳首」
例：味しらべ乳首がもはや８分の７くらいまで出るカットソー
「きよたまの」→「カウパー腺液」
例：きよたまのカウパー腺液まで舐めて俺のちんこの争奪戦か
「まるもりの」→「おっぱい」
例：まるもりのおっぱいいじめはもうやめて衣料品から放ってやれよ
「桃舞い（ももまい）の」→「独身女子寮」
例：桃舞いの独身女子寮しのび込み深呼吸だけやっておいとま
歌（和歌）における枕詞って、ちょっと大層なフリをしているが、実はぜんぜんどうでもいいもので、本当にちゃんと素晴らしい三十一文字を作り上げようという志がある人間だったらそんなものはまず使わないはずで、この言葉に対してはこれ、というお決まりがあるあたり、「よっ、待ってました」的な、大衆演劇的な、本格的な芝居どうこうという論理じゃなく、ただ受け取る側の痛快さのみに寄与する、「機能性」を感じる。機能性なら機能性で別にいい。高級料理に対するファストフード、高級ブランドに対するファストファッション、それはそれでいいのである。
納得がいかない部分があるとすれば、それは冒頭でも触れたように、「大層なフリをしている」ところだ。学校で和歌について学んでいるとき、枕詞は短歌技法のひとつとして説明され、どの言葉にどの枕詞が用いられるか覚えるなんてことまでさせられた。あれが、いま思えば「なんでやねん」なのだ。なんで我々が、歌の情趣とかとは一切の関係もない、当時の人々の「よっ、待ってました」のお決まりを覚えなければならなかったのか。なぜそんなものが答えられなかったから減点されなければならなかったのか。そのなぜ、という問いに真正面から答えるとするなら、こういうことになると思う。
枕詞は、一問一答の試験問題にとてもしやすいから。
意味とか、情趣とかは、取り止めがなくて問題にしづらい。ともすれば研究者によって解釈の違いだって出てくる。それに対して、「あしひきの」→「山」、「たらちねの」→「母」は、国語においては本当に珍しく、確固たる正答がある。そのため試験という形式との親和性が高い。だから枕詞は、真に価値があり、権威があったから試験に採用されたのではない。逆だ。試験に採用するにあたり、枕詞には価値が必要になった。だから後付けで、技法だのなんだのといわれるようになったのだと思う。
冷静に考えたら、こんな音を調子よくするためだけのフレーズに、意味も価値もあるはずがない。こんなものはただの遊びに過ぎない。遊びに過ぎないのだから、誰に断るまでもなく、僕が新しいそれを考えても問題ないということになる。枕詞とは、それくらい権威もなにもない、どうでもいいものなのだ。
というわけで最近はTwitter短歌でもっぱら、「＃オリジナル枕詞」と付して、それを使用した短歌をアップしている。ここでは現時点までで、オリジナルの枕詞を使って詠んだ歌を紹介したい。
ここで断っておきたいのは、ここまでさんざん、枕詞の価値の低さについて唱えてきたが、それは既に定まった、誰が最初に言い出したかも知れない枕詞を、自分が詠む短歌に使うのは本当に志が低いことだ、という意味でいっているのであって、この僕の試みのように、枕詞そのものをオリジナルで発案する場合、これは新しい趣向として大いに価値がある。皮肉もきいているし、とても創造的だ。大いに褒められて然るべきだと思う。誰も褒めないので、とりあえず自分で褒める。枕詞と、それの掛かる言葉が、近すぎても、遠すぎてもいけないので、その距離感が難しい。センスが問われる。以下に挙げるものの中にはそれが失敗しているものもある。これは仕方ない。少々の失敗はしょうがない。でもとにかく試みとしてすばらしい。そう思う。
オリジナル枕詞
「乳重（ちちおも）の」→「梅雨」
例：乳重の梅雨まだ明けぬ海の日の潮の香りのする膝枕
「常濡れ（とこぬれ）の」→「放課後」
例：常濡れの放課後ならば金玉を少しは触ってやってもいいよ
「抜きすさぶ」→「ナイトプール」
例：抜きすさぶナイトプールは総量の６割近くがバルトリン液
「夢縫い（ゆめぬい）の」→「陰嚢」
例：夢縫いの陰嚢だけが高校にもう何年も留年している
「めめぬめる」→「女湯」
例：めめぬめる女湯だけど俺だけは使ってもいい そう聞いている
「双子獅子（ふたごじし）」→「金玉」
例：双子獅子金玉を食むＪＫの今夏限定グロスまばゆき
「ちんまんの」→「セックス」
例：ちんまんのセックスしたい梅雨明けの急な雷雨のような衝動
「花襞（はなひだ）の」→「プリーツスカート」
例：花襞のプリーツスカートひるがえしをとめが見せる大小陰唇
「爛転ぶ（らんまろぶ）」→「ビキニ」
例：爛転ぶビキニで海に現れし少女に奢るフランクフルト
「べろつばき」→「フェラチオ」
例：べろつばきフェラチオクラブを創設す野添がまさか処女だったとは
べろつばきフェラチオばかりして過ごす忘れらんない夏にしようよ
「天を突く」→「勃起」
例：天を突く勃起のなにが好きかって語り合ってるひとときが好き
「てるつよし」→「亀頭」
例：てるつよし亀頭あたかも真円の球であるかのようなつやめき
「ぱんもゆる」→「ポルチオ性感帯」
例：ぱんもゆるポルチオ性感帯だけが俺の孤独を癒してくれた
「海外の」→「ヌーディストビーチ」
例：海外のヌーディストビーチ行ったとて欲情しないしさせもしないし
「さざなむる」→「陰毛」
例：さざなむる陰毛しげりをとめごは恋に部活に充実の日々
「味しらべ」→「乳首」
例：味しらべ乳首がもはや８分の７くらいまで出るカットソー
「きよたまの」→「カウパー腺液」
例：きよたまのカウパー腺液まで舐めて俺のちんこの争奪戦か
「まるもりの」→「おっぱい」
例：まるもりのおっぱいいじめはもうやめて衣料品から放ってやれよ
「桃舞い（ももまい）の」→「独身女子寮」
例：桃舞いの独身女子寮しのび込み深呼吸だけやっておいとま